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● 日付:2002年06月26日(水)

● 題名:里山の暮らし

● 本文:

そこに辿り着くまでに、初めて走り抜けた山中。
青々と田や畑が続き、山あいに牛小屋、懐かしい木造の小学校跡。
網が張り巡らされた田畑に、「もしやアイガモ農法か?」と思いきや、
案内のじいさまが「鹿だ」と言う。
鹿ばかりでない、熊も猪もと、いかにもさもありなんと思える原風景が続く。
「どんなに困っても、捕って食う事が許されん」と。

高く張り巡らされた網。
車に乗ると畑ばかりが眼に飛び込んでくる近頃、その土地その土地で趣の違う姿に
そこに住まう人々の暮らしを想う。

訪れた家は、幹線道路からほんの少し山手に入っただけの細い路地の先。
何度も行き来した道のすぐ際に、こんな暮らしが息づいていようとは、
普段知る由もない。

年老いた御夫婦ともはや中年に差し掛かった独り者の息子さん。
矍鑠としたじいさまが、永年連れ添ったばあさまの行く末を案じて
方々を探しまわったとおっしゃる。

ころころとよく笑うばあさま。
腰が曲がり、とても小さな愛らしい笑顔。
しゃがむと目線が合う。
きれいな肉付きのよい手のひら。
昨日逢ったことも、すでに消えている。また初めてのように挨拶してみる。

その笑顔に、自然微笑ましくなる自分が分かる。
この愛すべきばあさまが居なくなったこの家は、一体どんなだろうか。

老いたじいさまと初老に差し掛かる息子ひとりの男住まい。
その存在の大きさに涙しながら、日々の暮らしは途切れる事なく営まれ、
やがて年月はどんな風に彼らに迫るのか。。。

イメージする事を自ら止めた。
胸がつまって、こみ上げてきそうになったから。

街で雑踏にまみれながら、いつしか馴れて、
さして気にする事もなくなっていた自分に思いが及ぶ。
静かすぎるほどの山あいの古い家屋。
緑と空と、すぐそこに野生の生き物。

私は、どんなふうに老いていきたいのだろう。
どんなふうに暮らしたいのだろう。

憧れは憧れのままに、しかし、寂しさには弱いだろうと
今これを記しながら泣いちゃってる僕。

● 暗唱番号:

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